報 告 書

 

 

 XXXXXXXXX丁目XX-Xの建物の不具合に関し建築士法第21条に基づく調査の依頼を受けましたので、調査及びその結果について本書をもってご報告いたします。

 

 

 

 

 

 

 

XXXX一級建築士事務所

一級建築士 XXX XX

 

TEL XXXXXXXXX  FAX XXXXXXXX

 

 

 

内容

@. 木造部分(34層)について

 本件建物の概要を示す。本件建物の敷地は斜面地に存在しており、元に建っていた建物は、道路より高さ約5mの擁壁によって造成された地盤に存在していた。本件建物は、その道路側の擁壁を撤去して、1層目を道路と同じ高さとして、2層目までは地中に埋まっている形状であるが、1, 2層目は道路側に開放しており、鉄筋コンクリート造でとされている。2層目の天井のコンクリート床の上に立ち上がりをつくり、その立ち上がりを基礎として上部構造が施工されている。その3層、4層は2×4工法をベースとして計画されたこの住宅メーカーの形式適合認定を取得した建物で、木造である。その断面形状の模式図を以下に示す。  

断面模式図

 本件建物の3,4層部分については、その約3/4が形式適合認定による工場生産ユニットであるが、南西角部分を45度に外壁を設計した事から、この部分のユニットについては、現場で施工する事となった。以下このユニットについて「現場施工ユニット」という。現場施工ユニットの位置の概要を次図に示す。現場施工ユニットは、3層、4層、小屋裏の全てを対象としている。

工場生産ユニットと現場施工ユニットの位置関係

a. 3層床の施工状況

 本件建物の3層目の床について、洗面所の点検口より床下に入りその施工状況を確認した。事前に現場施工ユニットについて、3層目の床及び壁の施工図である現地施工部位(1)の図面との比較を行った。

 現地施工部位(1) では、現場施工ユニットの中央に206 (38×140mm) 材で、「ころび止め」が施工されるように設計されているが、実際にはころび止めが施工されていないことが確認された【参考写真 3】また45度に外壁が設計された付近についても、根太が図面と全く異なる方向で施工されていた。

現地施工部位(1)の図面     実際の施工状況

 外壁部分や工場生産ユニット側の側根太や端根太には、206 (38×140mm)材により添わせ側根太や端根太ころび止めが設計されており根太が2枚合わさって施工するようになっていたが、実際には外側に206材が一枚のみ施工されているだけであった。

【参考写真 4

 またエレベータシャフト周辺の基礎立ち上がりは、鉄筋コンクリートではなくブロックで施工されており、土台とブロックの間にはパッキン材などが一切施工されておらず、土台が宙に浮いた形となっていることが確認された。【参考写真 5

 これらの施工状況は、2×4工法の基本から逸脱しており施工図の内容とも著しく異なっていることから、契約の内容と異なる施工であると判断される。これらの施工によって、現場施工ユニットの3層床下部分については契約内容による構造の安全性が確保されておらず、補修が必要である

 エレベータシャフト周辺の土台については、土台下にパッキン材を挿入するなどして、エレベータシャフト周辺の壁の荷重が適切に基礎に伝わるようにすると共に、土台を基礎に定着させる必要がある。(ブロックに定着しても安全性が確保できないため、考慮が必要である)

b. 4層床の施工状況

 本件建物の4層の床の施工状況を確認するために、3層の天井を部分的に撤去して調査を行った。その結果、4層の床部分についても、ユニットの外周部分の根太には、添わせ側根太や端根太ころび止めが設計されており、根太が2枚合わさって施工されるようになっていたが、実際には外側に206材が一枚のみ施工されているだけであった。【参考写真 6また根太に対して1,162mm間隔で設計されているころび止めが施工されていないことも確認された。さらに45度に外壁が設計された付近についても、現地施工部位(2)と異なる方向で根太が施工されている事が確認された

【参考写真 7

現地施工部位(2)の図面     実際の施工状況

 工場生産ユニットである台所の3層の天井部分を撤去して、4層の床の施工状況を確認した。工場生産ユニットについては、目視できる範囲において、2×4工法の施工方法として不適切な個所は確認されなかった。

 4層床についても、3層床と同様に、施工図と著しく異なる施工が行われており、4層において床が撓むなどの現象を依頼者が訴えていた原因であったと考えられる。したがって、現場施工ユニットの4層床について、契約内容にである構造の安全性が確保される補修が必要である

c. 小屋裏の施工状況

 4層の西側洋室の物入れ天井点検口及び新たに設けた現場施工ユニット部分の天井点検口より小屋裏の施工状況を調査した。小屋裏についても、現場施工ユニット部分は、現地施工部位(3)として施工図が作成されている。

 しかしながら、施工図では隅垂木材が一本であるのに対して、実際には二本抱き合わせて取り付けられており、しかもその材は防腐処理が行われた材料であった。(この防腐処理された部材は、他の部分でも小屋裏の構造材としても使用されているが、本来3層の壁に使用されるように搬入された部材と推測される)しかも隅垂木から斜めに屋根勾配に合わせて施工される垂木は、施工図では隅垂木から左右対称に取り付けられる図になっているが、実際には左右バラバラに施工されており、図面と著しく異なる施工である事が確認された。さらに西側においては、屋根面の垂木を受ける受け梁が取り付けられているが、施工図にはそのような記載はなく、構造力学的にみても必要ではない。【参考写真 8

 またその直下にも梁状の部材が施工されているがその端部はOSB合板にブラケットで留めつけられており、何の構造的な補強の効果も得られない施工が行われているOSB合板の厚さでは、薄すぎて釘を留めている効果がない) 【参考写真 9

 さらに南側の屋根面の垂木については、垂木を受ける位置に梁が施工されているが、その梁を支える束などが片方にしか施工されておらず、宙に浮いているだけの部材が取り付けられていることが確認された【参考写真 10

 現地施工部位(3)にはトラス部分の各部材の接合部分には、「ネールプレート両面貼り」として金属のプレートで緊結するように記載されているものの、実際には殆どの接合個所において「かすがい」金物で接合されているだけであった【参考写真 11

 工場生産ユニット部分の野地板はOSB合板で施工されていたが、現場施工ユニットの野地板は構造用合板が使用されていたが、合板の継ぎ目に受け材が取り付けられてないことが確認された現場施工部位(3)の図面においては、合板の継ぎ目には受け材が指示されており、図面通りに施工すれば必ず受け材が取り付けられているはずであったが、実際にはそのように施工されていない。【参考写真 11

 これらに対して工場生産ユニット部分については、隅垂木に対して左右対称にそれぞれの屋根面に垂木が取り付けられており、野地板もOSB合板が使用されている。また合板の継ぎ目には受け材が施工されている事が確認された。【参考写真 12工場生産ユニット同士の接合部分にユニット接合金物が確認されたが、接合金物の存在が確認できただけで、金物を取り付けるための釘の本数や種類については、部材を切断するかユニット自体を撤去しなければ確認できない状態であった。【参考写真 13

 これらの小屋裏の施工状況から、現場施工ユニットにおいては、施工図面をまったく無視した施工が行われており、現況の施工状況では契約内容の構造の安全性は確保できないため全面的な補修が必要である。

 

d.  3層現場施工ユニットの施工状況

 本件建物の3層の現場施工ユニットの外壁面について、内装材を撤去してその構造体の施工状況を確認した。現場施工ユニットは45度の外壁面の全面に開口があるほか、その左右(西面、南面)にも開口があり、それらの開口の間には、耐力壁として見なす事ができる壁は設計されていない。

 外壁側の内装材を撤去したところ、現地施工部位(1)に示された壁建図とは著しく異なる施工が行われている事が確認された。次図のように各開口部の両側には、まぐさ受け材の外側に40489×89mm)材が設計されていたが、実際には設計通りの壁の幅は確保されているものの、まぐさ受けの他には、縦枠材は204材のみで、幅を合わすためにパッキンを入れて施工されていることが確認された。またコーナーの三角部分にはパッキン材などが取り付けられておらず空洞となっていた。【参考写真 14, 15, 16, 17

現地施工部位(1)の開口部の両端    実際の施工

いずれも西側開口部の平面図

 施工図では、現場施工ユニットの壁は通常の2×4 工法による枠組み壁とされており、壁面全体を床で組み立ててから垂直に起こすために、下枠が一体になっている必要があり、現地施工部位(1)にも連続した下枠材が記載されている。しかしながら、実際には下枠材は開口部の下には施工されておらず、開口部以外の壁面同士は、開口部の上の壁だけでしか接続していない。【参考写真 18】これらの施工状況を次図に示す。

現地施工部位(1)の開口部       実際の施工

いずれも西側の姿図

 各開口部のまぐさ材には、現地施工部位(1)の図面には、210(18×235mm)材が12mmの合板を挟んで各2枚が設計されている。しかしながら実際には西面及び南面には設計通りに210材が施工されていたが、45度の壁の開口部のまぐさ材には204材が施工されていることが確認された

【参考写真 14, 15, 16, 17

 現地施工部位(1)の図面では、まぐさ材は防腐処理が行われていないものを使用する事になっているが、実際にはこの45度の壁のまぐさ材には防腐処理が行われている204材が施工されており、本来縦枠材として使用される事を想定して搬入された部材を流用しているものと考えられる。

 南側の開口のまぐさ受け材は20418×138mm)材ではなく、幅が30mm2×4部材ではない材料が使用されていた。さらに南側の壁の縦枠は、下枠の裏側から留められるはずの釘が、斜め打ちにより上から打たれており、床の上で壁を組み立ててから起こしたのではなく、明らかに下枠を床に取り付けた後に、壁を立てた状態で施工したことを示している。(床面に倒して壁を施工すれば、縦枠は下枠の裏側から釘で施工することが可能になり、床上から斜めに縦枠を下枠に釘で留めるより、より高い強度を確保する事ができる)

 また45度の壁部分の開口部上部では、シャッターを取り付けるためのビスの受け材として施工された受け材が完全に外れており、シャッターを固定するビスが外壁材にしか留められていない事が確認された。【参考写真 15

 このように、3層の外壁側の壁材については、下枠が連続していない事、404材が一切施工されていないこと、まぐさ材の寸法が異なっている事など、契約内容とは著しく異なる施工が行われており、2×4工法の標準的な構造規準に合致しておらず、根本的な補修が必要である。

e. 4層現場施工ユニットの施工状況

 本件建物の4層の現場施工ユニットの外壁面について、内装材を撤去してその構造の施工状況を確認した。現場施工ユニットは3層と同様に、45度の外壁面の全面に開口があるほか、その左右(西面、南面)にも開口があり、それらの開口の間には、耐力壁として見なす事ができる壁は設計されていない。

 3層と同様に外壁側の内装材を撤去したところ、現地施工部位(2)に示された壁建図とは著しく異なる施工が行われていた事が確認された。各開口部の両側には、まぐさ受け材の外側に40489×89mm)材が設計されていたが、実際には3層と同様に、設計通りの壁の幅は確保されているものの、まぐさ受けの他には204材がパッキンを入れて施工されていることが確認された。またコーナーの三角部分にはパッキン材などが取り付けられておらず空洞となっていた。【参考写真 20, 21, 22, 23

 また3層と同様に、現場施工ユニットの壁は通常の2×4 工法による枠組み壁とされており、現地施工部位(2)にも下枠材が記載されている。しかしながら、実際には下枠材はそれぞれの壁部分、開口部分で分断されており、壁面同士は、開口部の上の壁だけでしか接続していない。

【参考写真 24

 まぐさ材についても、西面の開口部では210材で設計されているにもかかわらず、204材で施工されている。【参考写真 204層においても縦枠や窓台材の一部に防腐剤が塗布された材料が使用されており、これらの材は本来3層で使用される材料であったと想定される。

 外壁材の継ぎ目には受け材が必要であるが、西面の壁面については、受け材が施工されていない。【参考写真 20

 これらの施工状況は3層と基本的に同様の施工であり、施工図面と著しく異なる施工が行われており、契約内容である構造の安全性が確保されていない。したがって、根本的な補修が必要である。

f. 浴室廻りの構造

 本件建物の現場施工ユニットについては、既に見たように契約内容となる構造の安全性が確保できていないことが明らかになったが、工場生産ユニットの部分においても、構造体のうちで現場施工が行われている浴室廻りについて3層のトイレの天井を撤去すると共に、ユニットバスの点検口より調査を行った。

 本件建物のユニットバスは、3層及び4層の同位置に設計されているが、バリアフリーを実現するために、構造体の床が他の部分より下げられている。部分的に床を下げるユニットをあらかじめ工場で作成する事ができないために、本件建物では浴室部分を吹き抜けとして床の無いユニットを工場で作成して、床の無い部分を現場で施工したとのことである。

 ユニットバスの点検口及びトイレの天井裏より確認したところ、4層のユニットバスを支持する床を支える根太を受ける間仕切り壁は、次図のように施工されていることが確認された。

【参考写真 25, 26

実際にユニットバスを支える根太材の施工方法

 しかしながら、このように床に段差がある場合の2×4工法での一般的な施工方法は次図に示すように、根太を縦枠材に横から釘にて取り付け、かつ根太受けを直交方向に入れるなどしなければならない。また本調査にあたってハウスメーカー側にこの部分の施工状態についての本来あるべき状況を確認した際にも、縦枠材に取り付けて、根太を受ける添え縦枠材を施工しているとの返答を確認している。

本来必要なユニットバスを支える根太材の施工方法

 このように現在施工されているユニットバスを支える床版の支持方法では構造の安全性を確保できておらず、補修が必要である。

g. 設備関係

 本件建物では、3層、4層における給排水管を3層の床下から取り込みもしくは排出している。また2層の換気扇の排気ダクトも3層の床下より3層の壁面において排出している。

 これらの給排水管には、給水管や排水管の他に、温水配管なども含まれる。しかしながら、これらの給排水管が3層のものと4層のものが別々に3層の床下に取り込まれているが、それが全て基礎立ち上がり部分を横向きに貫通している。【参考写真 27, 28, 29その施工状況を次図に示す。

3層の床下からの給排水管の施工状況

 

 実際の3層床下の設備配管の施工状況は、排水の流れや将来のメンテナンス等に不安が残る状態である。【参考写真 27

 本件建物は3層、4層のそれぞれに、水廻りの設備が一式あることから、一般の住宅と比較しても上層階の設備配管が多く、下階への逆流などを考慮して、3層と4層の排水管を建物の中で接続していないことから、配管類の施工が複雑になる要素がある建物である。しかしながら、本件建物は2層にも住居部分があり、実際に排水が処理されるのは1層の高さの道路レベルである事を考えると、3層の床下で無理に外部に排水管を横引きして排水する必要性は低く、下階に適切な設備配管スペースを確保して排水を行う設計が必要であったと考えられる。

 またこれは次項で述べる3層の内外のレベル差の逆転現象についての原因にもなっており、適切な設備配管処理を考えると、34層からの排水管は、下階の室内空間を経由して排水されるように補修する必要がある。

h. 基礎部分の内外のレベル差について

 先にも述べたように、本件建物の3層床下については、外構の床が3層の室内下の床より高くなっていることが確認されている。外構が高い部分では3層の水切り金物の高さが約5cmしか確保されておらず、3層の入口付近においても約12cmである。【参考写真 29,  303層の床下より基礎の立ち上がりを計測すると、約28cmでありこの関係を図示すると次図のようになる。

3層基礎の内外の高さ関係

 このように本件建物の3層床下は、外周より低くなっている事が確認された。このような状況になった原因は、2層までの鉄筋コンクリートによる構造体の設計の際に、2層の上部スラブ(3層の床部分)の高さについて、3層より上層の木造部分の基礎の立ち上がりとの関係を十分に考慮せずに設定した事であると考えられる。

 すなわち本来は次図のように建物外周部分の梁の高さを下げるなどの配慮が設計で行われていれば、3層の床下が外構より低くなる事や例え排水管を3層床下で排出することになっても対応できたと考えられる。

施工された状況    3層の基礎を配慮した設計

 しかしながら、現況の状態を上図のように改変する事は現実的ではなく、3層の排水管を下階の室内を通す事により、外周部の高さを低くする事は可能であることから、少なくとも水切りまで外構床高さから10cm以上は確保できるように補修が必要である。

 また本件建物においては、3層の床下に水が滞留する事故が発生しているが、本調査においては外部からの水の侵入経路を特定する事はできなかった。実際には給排水管の基礎立ち上がり貫通部分の処理を行っていなかったことが原因ではないかとのことで、貫通部分の処置及び防水工事が内外から行われている。

 しかしながら、給排水管の貫通部分はいずれも室内側からみても3層の床下のコンクリートに接している部分であり、この位置から浸水した場合には、降雨もしくは地下水の上昇という外的要因の状況が変われば、侵入した経路から排水されるために、床下に滞留するとは考えにくい。【参考写真 2728すなわち、3層の床下での水の滞留についての原因は、建物内部の給水管からの漏水によるもので、基礎の立ち上がり部分の給排水管の貫通部分からは外部に排水されずに滞留したとすのが妥当であると考える。(この場合、補修工事をおこなったハウスメーカーは、漏水を把握していない事になり、管理者としても問題があると考えられる)

A. 鉄筋コンクリート部分(1,2層)について 

a. 配筋の施工状況

 ハウスメーカー側 検査建築士の手配により、鉄筋コンクリートの配筋状況をRCレーダーで確認したが、その結果報告書が提示されておらず、施工状況について判断できない。

b. コンクリート強度試験

 ハウスメーカー側 検査建築士の手配により、コンクリートの強度をシュミットハンマーで確認したが、その結果報告書が提示されておらず、施工状況について判断できない。

c. 断熱工事について

 本件建物の2層については、居室として設計されているが、地下に埋設される部分については、依頼者らの意向により鉄筋コンクリートの外周部分について、防水工事及び断熱工事が設計、施工されている。

 しかしながら、2層の西側の外壁面については、点検口及びクーラースリーブなどの開口から確認する限り、室内側にも外壁側にも断熱材が施工されていないことが確認された。【参考写真 31

 本件建物の3層、4層部分については、外壁や天井裏に十分な断熱工事が行われていること、鉄筋コンクリート部分についても地下に埋設される側について依頼者より断熱材を施工するように要望されている事からも、2層部分の外壁に断熱工事を行う事は極めて常識的な内容であり、これらの施工が行われていなければ、補修工事として断熱工事を行う必要がある。また2層の床下(1階の駐車場の天井裏)についても、駐車場が外部であるため断熱が必要であることは言うまでもない。

d. 換気扇工事について

 本件建物は、建築基準法で24時間稼働可能な換気扇が設置されなければならない建物である。しかしながら2層については、給気口や換気扇が取り付けられているものの、空気の流通経路や施工状況が確認済証に添付された図面と著しく変わっており、適切に設計し直して補修工事を行う必要がある。

B.ピット部分について 

a. 構造について

 本件建物北側には隣家との間に3層の地盤となる部分までを埋めるための構造物が建物の鉄筋コンクリートと一体で設計されていた。しかしながら、工事期間中に隣地際の掘削が困難であったことなどから、設計された形状とは異なる形状で施工されている。【参考写真 32

 また形状が異なっているだけではなく、設計では埋め戻しされる予定であった部分が空洞で残されており、ピット状になっている。次図にその形状を示す。

ピット部分の形状(東西断面図)

      西側               建物中央付近

ピット部分の形状(南北断面図)

 

 このような形状から、当初の設計と異なっており、その構造の安全性に疑問が残っている。ピット内を調査したところ、隣地側の壁面に鉄筋が露筋している個所があるなどの不具合も確認されている。【参考写真 33

 隣地との地盤の関係からこのピット部分の隣地側の壁に土圧がかかっており、現在の構造ではこれらの土圧を安全に負担する事はできないことから、構造的な補修が必要である。

b. 結露等の状況

 ピット部分の調査を行ったのは冬季であったが、地下からの水蒸気によりピット内が高湿度になり、またコンクリート表面が冷やされている事から大量の結露が壁面に発生している事が確認された。【参考写真 34

 コンクリート表面だけでなく、電気配線のための鋼板製の中継ボックスにも結露が生じており、竣工して1年に満たない状態ですでに錆が生じている事が確認された。【参考写真 35

 ピット内の高湿度の状態は、地中からの地下水の影響により発生しており、地下水侵入を止めることができない限り、何らかの対処を行わなければ変わらない。特に電気設備関係への悪影響が懸念されるために補修工事が必要であると考えられる。

 またピットの上面のスラブと本体建物との接合部より、埋め戻し土からの漏水が確認されている。この部分には防水が施工されていないばかりでなく、コンクリートの打設不良による「じゃんか」も見受けられる事から、この状態を放置すれば、鉄筋が錆びるなどの不具合が生じる事が確実であり補修が必要である。【参考写真 3738

c. 建物背面の地下水の排除設備の施工状況

 ハウスメーカー側 検査建築士の手配により、本件建物に設置された地下水を排出するために設置された有孔管の施工状態の調査が行われた。ピット内に露出している有孔管よりカメラ付きのホースを有孔管に挿入して、その先端がどの位置にあるかの調査が行われた。【参考写真 38

 調査の結果有孔管は約7mの長さで直線的に施工されており、その先端で土の中に埋め込まれている事が確認された。この長さは本件建物の北面の長さに相当している。しかしながら「XX様邸 RC図面 B階施工用 伏図」においては、北側だけでなく東側、南側約3mまでに「透水管 ヒストリカルパイプ φ100」が施工されるようになっている。依頼者によると当初は南側の配管は、南側より道路に放流するとの説明であったが、東側を経由して北側へとルートが変更されたとの事であった。

ハウスメーカー 作成の断面図(RC図面)

 このように設計内容と実際の施工が異なっており、本件建物の東面及び南面には地下水を有孔に排水する有孔管が施工されていない事が明らかになった。これらの有孔管を設置するには、有孔管が設置されている1層の中央付近まで3層の外周より掘削する必要があり、現実的には非常に困難であるため、代替え処置による補修を検討する必要がある。

.補修方法

@. 木造部分(34層)について

a.構造計算について

 本件建物の3層、4層については、ハウスメーカーの型式適合認定を受けた建物を主体に、一部を現場施工とする2×4工法によって設計施工されている。ハウスメーカーの型式適合認定を受けたユニットだけであれば、改めて構造計算による安全性の確認を行うは必要ないが、本件建物のように現場施工とするユニットが存在する建物については、建築基準法及び2×4工法の構造規準を示す平成131018日国土交通省告示第1540号(以下「告示第1540号」という)により安全性の確認を行う必要がある。

 しかしながら、建築確認申請時点では、木造部分の構造計算書は申請書に添付されていない。また依頼者が、本件建物に引っ越してから床の揺れなどの不具合に対してハウスメーカーに構造の安全性について問い合わせたところ、2階建て枠組み壁工法住宅構造計算書 20049月」が提示されており、確認申請時点では構造計算が行われていない可能性が考えられる。

 本件建物は告示第1540号により安全性を確認しなければならない建物であるが、45度に設計された壁の部分では、告示第1540号第5 壁等の「第七号 外壁の耐力線相互の交さする部分には、長さ90cm以上の耐力壁を設けなければならない。以下略」及び「第12号 耐力線に設ける開口部の幅は4m以下とし、かつ、その幅の合計は当該耐力壁線の長さの3/4以下としなければならない。」との仕様を満足していない。これらの仕様規定を満足しない建物については、告示第1540号第9 構造計算によって構造耐力上安全であることが確かめられた建築物等 の規定により、構造計算で安全性を確認しなければならないとされている。

 したがって、本件建物の建築確認申請時点で構造計算によって構造の安全性が確認されていなければ、その時点で建築基準法に違反する建物であるかどうかの確認ができていなかったことになる。また以降に述べるように後日提示された2階建て枠組み壁工法住宅構造計算書 20049月」においては、本件建物の構造の安全性は確認されているとは言えず、現況の建物は建築確認申請の図面や施工図の通りに施工されていても、建築基準法に違反している。

 告示第1540号第9 では、不適用とする仕様規定の内容によって、第一号から第三号までの三種類の構造計算方法を示している。ハウスメーカーが提示した「2階建て枠組み壁工法住宅構造計算書 20049月」においては、層間変位についての検証を行っておらず、第二号の内容で構造の安全性を確認することを目的としていた推測される。

 本件建物は告示第1540号第5第七号及び第12号の規定を満足していない建物であるから、告示第1540号第9 第1項 第二号による構造計算を行うことが必要であり、これによって始めて告示第1540号第5第七号及び第12号の適用を受けないことになる。

 

 第二号による構造計算では、「ロ 建築物等の地上部分について、令第82条の3第二号に定めるところによること。」と規定されており建築基準法施行令第82条の3第二号の内容である「各階の偏心率を次の式によって計算し、それらの偏心率がそれぞれ15100を超えないことを確かめること。」を検証しなければならない。

 

 しかしながら、「2階建て枠組み壁工法住宅構造計算書 20049月」で求められた偏心率は3層(計算書では1階)ではX方向が0.193Y方向が0.3000.15(15/100)を超えているほか、4層(同2階)でもY方向については、0.2230.15を超えている事が記載されている。このことから本件建物は、建築基準法による構造の安全性が確認できていないことが明らかになった。

 

b. 設計内容の変更による補修

 上記のように本件建物の3層、4層の木造部分は、設計の時点で構造の安全性が確保されておらず、これらの安全性を確保するためには、45度の外壁部分の周辺に耐力壁を造り、偏心率を15/100を超えないようにしなければならない。

 

 耐力壁の長さは、耐力壁の高さの1/3以上(約90cm)とするのが一般的であるが、本件建物は、南西の現場施工ユニットの外壁面に大きく開口を確保する事が依頼者らの希望でもあるため、60cmの壁を西面及び南面のコーナー部分に設置する内容に設計変更を行う。その窓位置は次図のようになる。

現設計の窓位置      補修設計の窓位置

 

c. 補修方法について

 本件建物の3層、4層及び小屋組の現場施工ユニット部分の補修の必要性は既に述べた通りである。現場施工ユニット部分については、施工図をまったく無視して施工されており、建築基準法、国土交通省告示、2×4工法の一般的な施工方法や手順のすべてを満足しておらず、部分的な改修や補強では構造の安全性を回復できない。さらに上記設計内容の変更による窓位置の変更も含めた補修を考慮すると、少なくとも現場施工ユニットについては、一旦全部を解体して、現場にて再施工する必要がある。

 

 また工場生産ユニットについても、ユニットバスを支持する床については、構造の安全性が確保されていないことから、3層及び4層のユニットバスを一旦撤去して、3層のトイレ側の壁及び4層の床及び下地材を全て撤去した後に、3層の壁より再施工する必要がある。

 

 設備配管についても、既に述べたように、4層及び3層の排水は、主役して下階の室内を経由して排水されるように配管しなおす必要があり、水廻り周辺の床及び壁を撤去して配管のやり直しを行う必要がある。排水管以外の給水管、給湯管、ガス管などについては、最低限基礎の立ち上がり部分から建物内へ取り込む必要がある。

 

 またこれらと同時に、3層の外周部と建物内部のレベル差についてもできる限り解消できるように、給水管など最低限基礎の立ち上がりを貫通して配管しなければならない配管が埋まる程度のレベル差に補修する必要がある。

 エレベータシャフト周辺の下枠との隙間についても、パッキン材を取り付けるなど、補強が必要である。

 現場施工ユニットは一旦全て撤去して再構築する必要があるが、屋根などはユニット部分で区分されておらず、一定の範囲の屋根材及び防水剤などを撤去する必要がある。また工場生産ユニットと現場施工ユニットの接続部分であるが、これらの部分の現場施工ユニット側は撤去することになるために、工場生産ユニットとの接続金物部分については、一部工場生産ユニットを破壊する必要がある。

 具体的には次図のように、上部の現場施工ユニットを撤去した後に、接合金物が施工されている工場生産ユニットの床側根太及び端根太を、接続金物の端部から45cm程度広く切り欠き、必要であれば添わせ側根太及びころび止めを接合金物の幅で撤去する。その状態で接続金物を撤去して、その後に下部の現場施工ユニットを撤去する。現場施工ユニットの再施工の際には、逆の順番で壁を立ち上げて接続金物を施工した後に、残った添わせ側根太及びころび止めに側根太及び端根太を横面から釘打で一体化して挿入する。後から取り付けた根太に対して上階の工場生産ユニットの壁の下枠を所定の釘で根太に固定する。

接合金物の撤去、取り付け方法

 

 このようにして、現場施工ユニットの全体の再施工と、構造生産ユニットの浴室廻りの再施工に伴う、屋根及び外壁の補修が必要であり、また排水管の補修により、水廻りの壁や床、天井の撤去復旧工事も必要になる。

A. 鉄筋コンクリート部分(1,2層)について 

a. 鉄筋コンクリート部分について

 本件建物の鉄筋コンクリート造の部分については、調査結果の報告が全て行われていないが、基本的に構造体としての補修は必要ないと考える。

b. 断熱工事の補修

 調査内容でも述べたように、少なくとも2層の西側外壁面および1層の駐車場の天井裏(コンクリート面)については断熱材の施工が必要である。また1層の玄関周辺についても本来であれば断熱が必要であるが、実際の利用状況や階段等の開放された吹き抜けで階上と連続していない事から、1層の天井裏部分に断熱が行われていれば、居住空間としては問題ないと考える。

 断熱工事は、ウレタンフォーム吹付け25mm程度を外壁面から内側に60cm程度壁及び天井(3層の建物の内側から)に施工する事が必要である。また1層の駐車場等の天井裏については、板状のポリスチレンフォームなどの板状の断熱材で厚さが30mm程度のものを施工する必要がある。

c. 換気扇工事の補修

 すでに調査内容で述べたように、建築基準法に適合した24時間換気扇が確認申請の図面通りの位置に施工されておらず、また適切な給気口が確保されておらず、補修を行う必要がある。

B.ピット部分について 

a. 構造についての補修

 ピット部分については、施工図である「XX様邸 RC図面 B階施工用 伏図」に示される形状と著しく異なっており構造の安全性について確認されているとは言えない。

 しかしながら隣地の地盤の状況を含めて検討を行った結果、隣地からの土圧を受けないようにピット内を埋め戻せば、北側隣地境界にある壁に負担はかからず、構造的な問題は減少することから、次図のような高さまで土を埋め戻すこととする。その場合には、埋め戻し土の部分に地下水が滞留しないように透水層を設けると共に、水抜き穴を道路側に設置する必要がある。

 また各種設備配管などが埋設されてメンテナンスが困難になるために、十分に養生を行った上で埋め戻しを行うと共に、配管位置などの記録を正確に残しておくことが必要である。

埋め戻しについての図

 、露筋している鉄筋についてはつり出して構造用の配筋であるか、たまたま一本だけ外れた構造に関係のない配筋であるのかを確認する。構造用の配筋でなければ取り出して、コンクリート補修専用のモルタルで補修を行う。その他にも「じゃんか」が多数発生しており、該当部分については健全なコンクリート面が現れるまではつり取り、補修用のモルタルで補修を行う。当然のことながら、これらの作業は上記埋め戻しを行う前に行っておく必要がある。

b. 結露発生等への対策

 本件建物のピット内の結露状況については、先の埋め戻しによる補修工事を行っても、地下水位が高いためにピット内の状況については、大きな変化はないと考えられる。

 

 電気用のボックスについては、ボックス内で結線が行われている訳ではないことから、外部に移設するなどの対処を行うと共に、電気メータ裏のボックスについても、地中用のものに取り替えるなどの補修が必要である。

 

 湿気対策としては、道路側の上部に空けられた開口(現在は道路側から埋められている)を利用して、給気口と吸排気扇を設置してピット内の水蒸気を外気に排出する補修が必要である。

 吸排気扇としては三菱電機 V-19ZMT φ150の中間取り付け型のダクトファンを使用する。

ピット内の結露対策について(平面図) (未割り当て、工事中)

ピット内の結露対策について(断面図) (未割り当て、工事中)

 

 またピット上面スラブと本体との接合部分のコンクリートの打設不良個所よりの漏水については、「じゃんか」部分を完全に撤去して、コンクリート補修用モルタルにて補修を行う。また3層の外周部分の高さ補修する際に、埋め戻し土を撤去した上で防水を施工して、ピットへの漏水対策とする。

c. 建物背面の地下水の排除設備について

 調査内容で述べたように建物背面に設計されていた地下水を排除するための有孔管が一部にしか施工されていない事が確認されている。設計では1層の中間の高さ程度に施行される予定であったが、現況の状態のまま設計で予定された位置に有孔管を施工する事は著しく困難である。

 本件建物の周辺は斜面地であり、ピットの内部に地下水が染み出ているなど地下水位が比較的高い(浅い)位置にあることが想定される。依頼者らができるだけ本件建物に湿気を与えないように検討して、鉄筋コンクリート部分に外防水を行うと共に、透水管を設置するように申し出た事を考えると、東面について3層の土間を撤去して、できる限り深い位置(1.5m程度)を掘削して透水管を設置してピット内へ排水する補修工事を行う必要がある。

 

 

  以上


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